高澤織物
髙澤 史納
日本の伝統に根付いた技術は国外での評価も高い。 もっと誇りを持っていいんじゃないでしょうか。
縮緬生産を柱に大正期に創業した初代の祖父、 上田紬に取り組んだ2代目の父、 そして「洋服地に手を出してジタバタしている3代目」と当人は笑うが、 その企画力と技術力は海外でも認知されるほど。 イッセイミヤケ、ヒロココシノら日本の著名デザイナーはもとより、 誰もが知るフランスのラグジュアリーブランドでもコレクション用の生地を手掛けた。 「それができたのは、最もデリケートで扱いづらい絹を織る上田紬の技術があってこそ」と髙澤さん。 ニューヨーク近代美術館(MoMA)に認められ、2002年から同ブランドのストール製作・販売も開始。 経糸は練りの極細絹糸、緯糸はカシミアという異素材を扱いながら、 繊細かつ複雑に織り上げる技術と風合いが高く評価されている。
名だたるブランドとのパートナーシップ。
そのきっかけは「展示会で商品を見て気に入っていただくなど、たまたま出会いに恵まれた」と言うが、
どのアパレルも基本は提案ありき。
具体的な指示や図面もない段階からデザイナーの嗜好や流行を考量し、
「彼らの頭の中にしかない絵にできるだけ近いものを自分の中にイメージし、形にすること」が求められている。
容易なことではない。
世界のトップクラスと仕事をするからこそ、
伝統に根付いた日本の技術がどれだけ海外で認められているかを実感する。
「コレクションに日本製の生地は欠かせない。
我々はプライドをもって世界に出て行っていいと思います」。
今後は、オーガニックコットンにも力を注ぎたいという。
「うちの規模でCSR(企業の社会的責任)は難しいが、
CSV(共有価値の創造)に基づいた循環型のビジネスでの社会貢献は可能だと思うから」。
その視線が見つめる先は広い世界だ。
高澤織物 紹介ビデオ
高澤織物の様子
高澤織物の特徴
1.ストール類は現在の主力商品で、百貨店等での直販、小売店への卸し、アパレルメーカーのOEM など、種類も販売ルートも多様
2. オーガニックコットンはこれからの主力のひとつ。フェアトレードを通じて産地の環境や人々の暮 らしに少しでも貢献したい
3. 手前の機械が経糸をつくる手動の整経機は昭和8年製。高速の機械と違って融通がきく。このお陰 でパリの有名ブランドのシルク100%生地が完成した
4. 撚糸機で必要な糸を組み合わせ、撚りをかけて一本の糸にする。出来合のものとは微妙な違いが 生じ、完成した生地がひと味違ったものになる