藤本 つむぎ工房
佐藤 元政
変わり続ける時代や生活様式に添って 本当に求められるものをつくる。それが大切だと思います。
織物体験のための機織り機が並ぶショールームには、反物や洋服地、バッグ、帽子等の小物まで幅広い商品が揃う。
問屋を介さない直接販売が藤本 のスタイルだ。「質の高さは保ちつつ、省ける部分は省き、できるだけ価格は抑えて、着物が着やすい環境にしていきたい。
紬はもともと庶民の着物、僕らがつくっているのは芸術作品では ありませんから」と佐藤さん。
多彩な商品の中でも特に目をひくのが、レディースを中心に展開するオリジナルの洋服だ。年ほど前から洋服を手掛けるようになっていたが、 製作は社外に委託していた。
社内に縫製室を設置したのは数年前だ。絹の扱いに長けた老舗とはいえ、洋服はまた別物。
自社製作にあたっては、パリの有名ブランドの元チーフデザイナーを招き、
デザインや縫製の勉強を重ねた。身の周りに絹があって当たり前の環境に慣れていたせいか、
「シルクという高級品を扱う意識に欠ける」と指摘されたこともあったという。
オーダーメイドやお直しに対応できる態勢は整ったが、今後も各界のプロに学びながら、若い世代にも受け入れられる洋服づくりに取り組んでいく。 同時に、小物類のデザインや使い勝手を見直しながら「ここでしか手に入らない魅力的なもの」を充実させていくつもりだ。 洋服という新商品は大切に育てていくが、「あくまでも絹の良さを感じ、 着物に興味を持ってもらうためのきっかけになれば...」というのが本当の思 い。 「芸術じゃなく、文化として産業として人々の生活の中に残れなければ、 着物も紬も過去の遺物になってしまう」という冷静な視点と、 「変化してこそ伝統は継承される」という柔軟さのバランスをとりながら、若手の奔走は 続く。
藤本つむぎ工房 紹介ビデオ
藤本つむぎ工房の様子
藤本つむぎ工房の特徴
1.上田紬で社内に縫製室をもつのは藤本だけ。百貨店の縫製を担当していた腕のいいベテラン社 員がオーダーやお直しも応じる
2. 小物類の中でも人気の高いオリジナルの紬帆布トートバッグ。綿帆布よりずっと軽く、特殊な加工 によって一般的な紬より丈夫。ポリエステルだった持ち手を真田紐にリニューアルした
3. 洋服はレディースがメイン。デザイン、サイズ、売り方まで、新しくやりたいことがたくさん
4. 長野県の織物関係では唯一、現代の名工に選ばれた工場長が目を光らせて高品質を維持している
5. 県外からの観光客が頻繁に訪れるショールーム。「見せ方を工夫し、もっと素敵にしていきたい」