まつや染織
小山 憲市
着手の人生に携わると思うと半端な気持ちでは織れません。 結局、着物が好きなんですよね。
「糸づかいにはこだわりたい」と小山さんは言う。
「どんなにファッション性が高くても心地良くないものはタンスの肥やしになり、
着心地が良いものを身につければ人は笑顔になれる。
着心地を左右するのは糸の種類、組合せ、密度、配列…つまり糸づかいが重要なんです」と。
「かなり凝ったこともあった」という色柄に対する考え方は、
「できるだけシンプルに。主役は着物ではなく着る人。
その人の良さを引き出すためには着物が勝ってはいけない」
と変化を遂げた。
年に数回は全国各地のギャラリーで個展を開催。
目の肥えた人々に注目される緊張感はあるが、
着手の発想にじかに触れるのは楽しく、
得るものも多いという。
ある個展では、成人式の振り袖を依頼された。
かつて庶民の着物だった紬だが、その価値は変化している。
生地の質感や色柄に配慮すればフォーマルな場にも相応しい。
顔かたちや肌の色に似合う色と模様、
その人がもつ雰囲気や嗜好等にも配慮してデザインされた
「世界に一枚だけ」の振り袖が話題にならないはずはない。
その後も注文は続き、世に出た振り袖は6着になった
これまで何種類もの植物で糸を染めてきたが、最近初めてウメを使用した。
いつかウメで…という思いを知る高校の恩師が生前に、
「自庭のウメを切ったら小山に」と遺したものだという。
ウメの樹皮で染め織ったうちの一反は、恩師の奥様に謹呈した。
手元に残った糸は、すくい織りという手法で織り上げた。
何とも言えない上品な色彩と光沢を放つ着物は、
今も工房に飾られている。
「とにかくいいものをつくりたい。生涯かけてレベルを追究するだけ、一生勉強です」。
穏やかな語り口に、堅い決意が滲み出る。
まつや染織 紹介ビデオ
まつや染織の様子
まつや染織の特徴
1. ウメの樹皮で染めた着物。すくい織りをした部分は、立居振舞いの際に軽やかに光る。オーダーの 振り袖もこうした生地で
2. の昔「小山さんの着物は隙間がない」と言われ、引き算の難しさを痛感。強い帯や帯留めでも受 け止められる飽きのこない着物をつくりたいと思っている
3. 「 経糸をかけるときに織物の性格が決まる。糸の組合せ、配色は無限です」と1本の糸にこだわる
4. 草木染めの原料にはクリ、クルミ、アカネ、カリヤス、ヤナギなどを用いる。希望通りの色が出せる 化学染料の割合が少々多い
5. 野生の蚕が入っていた殻を糸にして混ぜると麻のような風合いに
基本情報
住所
〒386-0002 長野県上田市住吉257-11
TEL
0268-24-6070
FAX
0268-24-6073
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