自在とは、意のままであること、
自分の思うとおりにできること。
上田紬の職人たちは、
始祖から500年を超え、
過去の伝統や様式に囚われず、
機能性やデザイン性に創意工夫を
積み上げ常に前を向いて歩んできた。
この自在さが他の伝統工芸にない上田紬の魅力。
信州大学繊維学部を始めとした
先端技術とのコラボレーションなど、
これからも歩みは続いていく。
蚕・蚕種と共に三百有余年の歴史を誇る
生糸に適さない屑繭を真綿にし、 真綿からつむいだ紬糸で織られたものが紬織物。
古くから養蚕業が盛んだった上田では、農家の自家用として紬が織られるようになったという。
上田紬が有名になりはじめたのは 、蚕種( 蚕の卵 )の製造が開始された1660年頃といわれる。
蚕種の副産物である出殻繭は、良質な紬糸の原料だった。
ちなみに、上田紬の名を知らしめたのは、真田昌幸・幸村父子と言われる。
関ヶ原の合戦で勇名を馳せると上田の名も広がって、「真田も強いが上田( 紬 )も強い 」と人々が囃したようだ。
上田紬の強さは、裏地を3回取り替えられるほど長持ちするという
三裏縞( みうらじま )」の別称にも表れている。
江戸時代には庶民統制令による衣服の規制が厳しく、庶民が絹織物を身につけることはできなかった。
だが紬は、絹であっても生糸ではないと容認され、庶民にとって最高級の織物として人気を博した。
井原西鶴の『日本永代蔵』に上田紬に関する記述があり、また喜多川歌麿の美人画に上田縞の反物が描かれていることからも、
その知名度の高さがうかがえる。 文化文政年間に取扱高は相当量にのぼり、上田紬は隆盛を極めた。
繊維の女王、絹織物の実力
手ざわりがよく、軽く丈夫で、吸放湿性の高い絹が、 人にやさしい繊維で あることは各種データで実証されている。 また、絹は透湿性に優れているので保温性があり、夏は涼しく、 冬はやわらかな温かさが感じられる 。寒い季節、絹が肌にふれた瞬間はひんやりするが、 すぐに温かくなるのは、熱伝 導率の低さによるもの。 高い機能性と美しさを兼ね備え手ざわりがよく、軽く丈夫で、吸放湿性の高い絹が、 人にやさしい繊維であることは各種データで実証されて いる。
寒い季節、絹が肌にふれた瞬間はひんやりするが、すぐに温かくなるのは、熱伝導率の低さによるもの。 高い機能性と美しさを兼ね備えているからこそ、絹は繊維の女王と讃 えられている。
多彩な柄と織りが上田紬の魅力
歴史と伝統と創造
上田紬のにおいては、各工程に専門職をおく分業体制 をとっていない。 仕入れた糸の染色にはじまり、洋服のデザインにあたる生地の設計、 織りまで、ほとんどの工程を一人で行う。上田紬の職人はオールラウンダーなのである。
上田紬にとって、長い歴史と伝統は かけがえのない財産であり、誇りである。
だが、300年を優に超える歴史は、過去の踏襲によって築かれたものではない。
古き良きものを守ることと同時に、これまでにない新しいもの、
この時代だからこそ必要なものを創出することが、伝統の継承には欠かせない。
時代に受け入れられるための創意工夫は、上田紬が得意とするところ。
革新的なものづくりを推進するための、
信州大学繊維学部との産学官連携による新プロジェク トもスタートした。
これから生まれる「新しい上田紬」への期待は大きい。